すべての子どもには、味方が必要だ。決してその子を諦めない、一人の大人が。
— TED Talk (2013)「Every Kid Needs a Champion」
ひとつの実話
Rita Pierson はアメリカの低所得地域で四十年間教えた。彼女に会う子どもたちの多くは、まず「自分は勉強に向いていない」から話を始めた。彼女は 2013 年の TED トークで、あるひとつの小さなエピソードを語った。それ以来、この話は教育の世界を旅している。
その年、彼女のクラスの生徒が数学のテストでひどい点を取った。標準の採点でいけば、その答案には「-18」と書かれるはずだった。彼女は -18 と書かなかった。答案の上に「+2」と書き、スマイルマークを描いた。生徒が顔を上げて言った。「先生、これ、落第点ですよね?」彼女は答えた。「そう。でも、二問できている。あなたは全部が間違いなんじゃない。」
後に彼女はこう説明した。「-18」は子どもに あなたはここでもう終わっている と伝える。「+2」は同じ子どもに あなたには、ここから上がれる出発点がある と伝える。同じ子ども、同じテスト、隅の一行が違うだけ。その週、この子がもう一度その本を開くかどうかは、素質の問題ではなく、その一文の問題だった。
TED トークが公開されてから数週間後、Rita Pierson は病気で亡くなった。あの映像は今日までに二千万回以上再生されている。
私たちの感想
Rita Pierson が語る「味方」は、いちばん寛容な大人のことではない。それは、子どもの「いまの失敗」を、その子ども自身の定義にしてしまうことを拒む大人のことだ。この二つは、まったく別の仕事だ。
「+2」という動作は小さく見えて、具体的な介入だ。落ちかけている子どもに、「あなたの次の一歩は、上に行くこと。消えることではない」と伝えている。この一文は、その子を「見る」つもりのある大人にしか言えない。Pierson は四十年かけて、他の大人たちに、この一文をもっと言えるように教えていた。
これは Luminis が言う「伯楽」でもある。天才の名馬を見抜く人ではなく、ふつうの馬が、自分は駄馬だと自分で信じ込んでしまうのを、拒む人のことだ。